高校を卒業したばかりの僕は、工業高校出身の直球勝負の青年でした。ラグビーに打ち込んでいた学生時代は就職活動の優先順位が低く、卒業後は先生が紹介してくれた工場で働き始めました。
工場で勤務をし始めて少し経ったある日のこと。同じ工業高校出身の友人たちが他の工場でずっと高い給料をもらっていることを知り、衝撃を受けました。彼らは夜勤や残業で手取り20万以上を稼いでいるのに対し、自分の給料は16万から手取り13万ほど。この現実は、僕の心に大きな疑問を投げかけました。
自分の働きぶりは評価され、提案が社内に通ることもありましたが、心のどこかで満たされないものを感じていました。ある日、上司から言われたこの言葉は僕の人生における大きな転機となりました。
僕の次なるキャリアは・・・釣具屋でした。単純に、魚が好きだった。それだけです。この情熱を仕事に活かすことを決意し、釣具屋や水族館へ電話して雇ってもらえないかお願いをしてみました。そうして運よく釣具屋で働くことができました。
釣具屋での仕事は楽しく、僕は販売のスキルを活かしていました。しかし会社の年功序列の給料体系のため、いくら売上を上げても給料にはほとんど反映されませんでした。同僚たちと同じように頑張っても、給料の大きな差は埋まらず、モチベーションは下がる一方でした。
同じ会社の大卒の同期と比べると、入社時点で給与に4万円の差があったのです。この差は、年功序列の職場では簡単には埋められないものでした。最高の評価を受け続けたとしても、この初期の差を超えることは不可能だと悟りました。
販売の仕事自体は楽しみ、自分のスキルを認めてもらえる環境を求めていました。しかし、現状の職場では、どれだけ頑張っても評価されることはなく、それが転職を決意する大きな理由となりました。僕は自分の価値を正当に評価してくれる場所を求め、転職を決意しました。
そんなこんなでリフォーム業界に足を踏み入れたのは、ある広告の一文「頑張れば100万円」に心を奪われたからです。正直、評価さえしてもらえれば売るものなんてなんでもよかったのです。
この言葉に惹かれ、僕はリフォーム業界へ飛び込みました。
入社したリフォーム会社では、訪問販売で案件を獲得していました。入ってから気づいたのですが、週に6人もの新人が入社し、そのうちのほとんどが1週間で辞めていくという超ブラックな環境。しかも1週間で1件もアポイントメントが取れなければ即クビという厳しいルールがあり、生き残りをかけた戦いが毎日繰り広げられていました。1年半も勤めれば、そこではもうベテラン。気がつくと、社長の側近のようなポジションになっていました。
訪問販売の仕組みは独特で、僕たちは5〜6人のチームで指定されたエリアに「降ろされ」、その日の訪問販売を開始します。この「降ろされる」というのは、文字通り車から出されて一定のエリア内で訪問販売を行うこと。夜9時までそのエリア内で活動を続けることが求められました。
訪問販売法律上、9時までに活動を終えなければならないため、その時間が僕たちの退勤時刻でした。
長く勤め、支店長ポジションに昇格すると役割が大きく変わりました。支店長はクロージング専門のポジションとなり、営業スタッフが取り込んだリードに対して最終的な契約を締結する責任を担います。このポジションは、高い成果を求められる一方で、営業チームを率いるリーダーシップも必要とされるため、非常にプレッシャーの大きい役割でした。
会社からは、常に押しの強いトークマニュアルが提供され、それに従うことが求められました。しかし僕はその方法に疑問を感じ、お客様自身に話をさせ、ニーズを引き出す方法を試みました。これが意外にも功を奏し、お客様との信頼関係構築につながったのです。
多くのお客様はリフォームを「買うことを望んでいない」状態でした。彼らは家の劣化を防ぐためや、将来的なトラブルを避けるために仕方なくリフォームを受け入れていました。
そんなお客様に対して「この家、僕にはすごく綺麗なように見えているんですけど、ここにくる営業マンってどんなところを指摘するんですか?」と尋ねたのです。
そうすると不思議なことに、勝手にお客様がお家の劣化しているところを喋ってくれるんです。彼らの話をじっくり聞き、必要な提案をすることで押し売りではない新しい営業スタイルを確立しました。
23歳になり、次は訪問販売の営業職へ転職。その会社の毎朝のルーティンが忘れられずにいます。
一日の始まりは異例の光景でした。
朝6時というおかしな時間に、社訓を大声で読み上げるところから始まります。
ちなみに、初めから朝6時始業だったわけではないのです。8時から朝礼をして、近隣住民の方々から「朝礼がうるさい!」とクレームが入ったため、まだ住民の方々が起きていない6時スタートに変更になったのです。
読み上げが終わるとプロレスの入場曲が流れます。これが掃除スタートの合図。
曲のサビ(一番盛り上がるところ)が始まると、全員で事務所の掃除が始まりました。掃除機をかけ、机を拭きながら、音楽に合わせて動く。この一体感とリズムはチームワークを育み、日常の業務に活気をもたらす独特の文化だったように感じます。今思うと、少しおかしいですが。
朝礼と掃除が終わると、次は7時半からのアポイントメント確認の電話タイム。アポイントメントの確認を行い、その日の訪問スケジュールを最終確認します。今では、よくこんな早朝に電話に出てくれたな・・・と思います。
この会社での経験は貴重でしたが、アドカラーズにはその文化を持ち込んでいません。大声での朝礼や、声を出すことで気合を入れるスタイルは、当時はエネルギッシュに感じられましたが、現代の職場環境にはそぐわないと感じています。
今振り返ると、その独特の朝礼は一種のチームビルディングだったように思えます。
当時の僕には必要な刺激でしたが、やはり現代には合わないように感じます。気合いではなく仕組みで解決するべきですね。事実、アドカラーズにはそもそも営業マンはいません(笑)
まりペトが書きました。
後編もお楽しみに♪
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