こんにちは、埼玉でリフォーム会社を営んでおります、アドカラーズの冨岡です。
公開したYouTube動画でもお話ししましたが、最近、特に埼玉県内のお客様から非常に心配なご相談が増えています。
それは、長年住み慣れたお住まいの瓦屋根を、安価な「コロニアル屋根」に葺き替えようとされているケースです。
業者から「安くて綺麗になりますよ」と勧められ、つい契約しそうになるお気持ちは痛いほど分かります。
しかし、どうか一度立ち止まってください。
その選択は、数年後に大きな後悔と予期せぬ出費を招く、非常に危険な罠かもしれないのです。
この記事では、なぜ重い瓦屋根を硬いコロニアル(スレート)屋根に葺き替えることが根本的な間違いなのか、多くの業者が語らない構造力学、材料科学、そして実際の失敗事例を交えながら、専門家の視点から徹底的に解説します。
まず理解すべきは、日本の伝統的な瓦屋根がいかに重いか、という事実です。
例えば、30坪(約100㎡)の一般的な木造住宅では、屋根の上になんと4トンから5トンもの瓦が乗っています。
これは小型トラック1台分に匹敵する重量です。
この途方もない重さが20年、30年と長きにわたって家を押し続けると、屋根を支える下地の木材(野地板)は、目には見えなくとも確実に歪み、たわんでしまいます。
これは施工不良ではなく、木材が長期間、巨大な応力を受け続けた結果として生じる自然な現象です。
つまり、築年数の経ったお住まいの屋根は、もはや完璧な平面ではないのです。
一方で、コロニアル屋根(別名:スレート屋根)とはどのようなものでしょうか。
これはセメントと繊維質を主成分とし、厚さわずか5mm程度に固めた薄くて硬い板です 。
柔軟性は皆無で、動画で私が「まっすぐピンです」と表現した通り、一切曲がりません。
ここに、このリフォームの根本的な欠陥があります。歪んで波打った面に、まっすぐで硬い板を置くとどうなるでしょうか。
当然、屋根下地との間に無数の隙間が生まれます。
コロニアルの板は、下地の高い部分に乗り、低い部分の上では浮いた状態になってしまうのです。
この「浮いた状態」が、悲劇の連鎖を引き起こします。
「踏み割れ」のリスク
施工中に職人が屋根の上を歩くと、体重がかかった際に浮いている部分のコロニアル材が下地の凹みに向かってたわみ、「パキン」と音を立てて簡単に割れてしまいます 。
これは、工事が完了する前から、あなたの新しい屋根がすでに破損している可能性があることを意味します。
悪質な業者は割れたことに気づいても、そのまま工事を進めてしまうことすらあります。
台風への脆弱性
下地との隙間は、風の通り道となります。
台風の際、風は屋根の上を吹き抜けるだけでなく、パネルの下に潜り込んで強烈な吹き上げの力を発生させます。
これにより、屋根材が剥がれたり、屋根の頂上を覆う棟板金が飛散したりする被害が多発します 。
水の侵入と腐食
小さなひび割れも、雨水の侵入口となります。
冬場には、ひびに入った水が凍結して膨張し、さらにひびを大きくする「凍害」という現象を引き起こします 。
こうして屋根材を突破した水は、その下の防水シートや野地板を濡らし、外部からは見えない場所で深刻な腐食を進行させてしまうのです 。
コケやカビの温床
コロニアル屋根のザラザラした表面は、水分を保持しやすく、コケや藻、カビの絶好の繁殖場所となります。
これは美観を損なうだけでなく、屋根材自体の劣化をさらに加速させる要因です 。
安い初期費用という魅力の裏には、このように高リスクでメンテナンス費用がかさむ未来が隠されています。
これは単なる価格の問題ではなく、長期的なリスク管理の問題なのです。
瓦屋根からのリフォームを考える上で、もう一つ知っておかなければならない重大なリスクがあります。それは、特定の時期に製造された「欠陥スレート屋根材」の存在です。
1990年代後半から2000年代初頭にかけて、建材におけるアスベスト(石綿)の使用が段階的に禁止されました 。
これを受け、各建材メーカーはアスベストを使わないノンアスベスト製品の開発を急ぎました。
しかし、その過程で、耐久性に問題を抱えた製品が一部市場に出回ってしまったのです。
その代表格が、ニチハ社が1996年から2008年にかけて製造・販売した「パミール」という製品です 。
この屋根材は、経年劣化によって表面がまるでミルフィーユのように何層にも剥がれてしまう「層間剥離」という特有の症状を起こすことが知られています 。
この状態で塗装を提案する業者がいたら、それは無知か悪意のどちらかです。
剥がれかかっている面に塗装をしても、屋根材の次の層が剥がれる際に塗膜ごと一緒に剥がれ落ちてしまうため、全く意味がありません。
それどころか、塗装前の高圧洗浄で屋根材がバラバラに砕けてしまう危険性すらあります 。
パミールの他にも、セキスイの「かわらU」や旧クボタの「アーバニー」など、同様に耐久性の問題が指摘されている製品が存在します 。
これらの問題製品に対して、部分的な補修や塗装という選択肢はありえません。
唯一、安全かつ恒久的な対策は、既存の屋根材をすべて撤去して新しい屋根材に交換する「葺き替え」か、既存の屋根の上から新しい屋根材を被せる「カバー工法」の二択となります 。
これは交渉の余地がない、絶対的な判断基準です。
ご自宅の屋根がこれらの問題製品でないかを確認することは、業者選定における最初の、そして最も重要なステップです。
経験豊富な業者であれば、一目で見分けることができます 。
この知識の有無が、その業者の信頼性を測る一つのバロメーターになると言えるでしょう。
では、瓦屋根からのリフォームで本当に選ぶべき屋根材とは何でしょうか。
幸いなことに、現代の技術は素晴らしい選択肢を用意してくれています。
私が動画で「最適解」として紹介したのが、ガルバリウム鋼板です。
これは、アルミニウム・亜鉛合金でメッキされた鋼板で、昔ながらのトタンとは比較にならないほど高い防錆性能を誇ります 。
●主なメリット
①軽量かつ柔軟
瓦の数分の一という軽さに加え、最大の利点はその柔軟性です。
長年の重みで歪んだ屋根下地の形状に合わせてしなやかにフィットさせることができるため、コロニアル屋根のような致命的な隙間が生まれません 。
②圧倒的な耐久性
製品寿命は25年~40年以上と非常に長く、セメント系の屋根材のように外的衝撃で割れる心配もありません 。
③デザインの多様性
「瓦の見た目が好きだ」という方のために、「瓦調ガルバリウム」という製品もあります。
これにより、家の和風の趣を損なうことなく、屋根の性能を飛躍的に向上させることが可能です 。
④弱点の克服
「金属屋根は雨音がうるさい」「夏は暑い」というのは、もはや過去の話です。
現代の高品質な製品、例えばアイジー工業の「スーパーガルテクト」やニチハの「横暖ルーフ」などは、鋼板の裏側に分厚い断熱材が一体化されています 。
この断熱材が、雨音を吸収し(遮音性)、夏の熱気や冬の冷気をシャットアウトする(断熱性)ため、非常に快適な住環境を実現します。
もう一つの優れた選択肢が、アスファルトシングルです。
これは、ガラス繊維のシートに防水性の高いアスファルトを浸透させ、表面にセラミックコーティングされた石粒を吹き付けた屋根材です 。
ゴムシートのように柔らかく、非常に柔軟なのが特徴です 。
●主なメリット
①究極の柔軟性
カッターナイフで切断でき、複雑な形状の屋根にも完璧に追従します。
これにより、屋根下地にぴったりと密着し、水の侵入経路を断ちます 。
②高い防水性と静音性
主成分がアスファルトであるため防水性が高く、表面の石粒が雨音を拡散させるため、室内は非常に静かです 。
③耐衝撃性
柔軟な素材のため、雹(ひょう)などが当たっても割れることがありません 。
④注意点
アスファルトシングル自体には断熱性能が低いため、屋根裏の断熱をしっかり行うことが快適性の鍵となります 。
また、その性能を最大限に引き出すには、適切な接着剤の使用と丁寧な施工が不可欠であり、施工業者の技術力が問われる屋根材でもあります 。
ニチハの「アルマ」など、信頼性の高い製品を選ぶことも重要です 。
これらの優れた選択肢に共通するキーワードは「柔軟性」と「軽量性」です。
数十年間、重く硬い瓦屋根の下にあった家が今求めているのは、家の歪みに優しく寄り添うことができる、しなやかで軽い屋根なのです。
屋根リフォームは、単なる修繕ではありません。それは、家族の安全と資産価値を守るための、極めて重要な投資です。
物理の法則は単純です。
建物の重心が高いほど、地震の際には振り子のように揺れが増幅され、柱や壁に甚大な負荷がかかります 。
屋根は家の一番高い場所にあるため、その重さが耐震性に直接影響するのです。
ある調査データによれば、重い屋根は軽い屋根に比べて耐震性を最大で4割も低下させる可能性があると指摘されています 。
また、重い瓦屋根を軽量な金属屋根に葺き替えることで、壁の耐力性能が約60%も向上したという実験結果もあります 。
この原則は、国の法律である建築基準法にも明記されています。
建築基準法では、瓦などの「重い屋根」を持つ建物には、金属屋根などの「軽い屋根」の建物よりも多くの耐力壁(地震力に抵抗する壁)を設けるよう義務付けているのです 。
つまり、4~5トンもある瓦屋根を、その5分の1から8分の1の重さであるガルバリウム鋼板やアスファルトシングルに葺き替えることは、法律的にも認められた極めて有効な「耐震補強工事」に他なりません 。
コロニアル屋根の安い見積もりは、一見魅力的に映るかもしれません。
しかし、長期的な視点で見ると、その判断は大きく変わります。
初期費用が安いコロニアル屋根は、頻繁な塗装や補修が必要となるため、30年間のトータルで見ると最も費用がかさむ可能性が高いのです。
一方で、初期費用が多少高くても、メンテナンスフリーに近いガルバリウム鋼板は、長期的に見て最も経済的であり、かつ最高の耐震性能を提供します。
屋根リフォームは、目先の安さで決めるべきではありません。
それは、あなたの家族の安全と、将来の家計を守るための賢明な投資なのです。
最終的に、リフォームの成否を分けるのは、材料以上に「誰に頼むか」です。
間違った屋根材を平気で勧めてくるような業者を、どうすれば見抜けるのでしょうか。
まず、彼らの常套手段を知っておくことが重要です。
①「無料点検」の罠
「お宅の屋根が割れていますよ」と突然訪問してくるのは、最も古典的で悪質な手口です 。
屋根に上がる口実を作り、実際には問題ない箇所を「破損している」と偽ったり、故意に屋根材を破壊したり、他人の家の写真を見せたりするケースが後を絶ちません 。
②契約を急がせる
「今日契約すれば半額にします」といった大幅な値引きは、他社との比較をさせないための典型的な手口です 。
冷静な判断を奪うための心理的な罠だと認識してください。
③火災保険の悪用
「火災保険を使えば無料で直せます」という甘い言葉にも注意が必要です。
保険金が適用されるのは正当な自然災害による被害のみであり、安易な申請は不正請求に加担することになりかねません 。
④曖昧な「一式見積もり」
優良な業者の見積書は、材料名、数量、単価、工賃などが詳細に記載されています。
「工事一式」といった大雑把な見積もりは、手抜き工事や後からの追加請求の温床です 。
業者と話す際には、以下のチェックリストをぜひ活用してください。
これらの質問に誠実に、具体的に答えられるかどうかが、信頼性を見極める鍵となります。
①地域での実績
「この埼玉の地域で、どのくらい営業されていますか?近隣での施工事例を見せていただけますか?」
②専門性
「屋根工事が本業ですか?それとも数あるリフォームの一つですか?」
③調査方法
「屋根の調査はドローンや高所カメラを使いますか?脆いかもしれない屋根に、いきなり人が上がることは避けてほしいのですが」
④見積もりの詳細
「見積書には、使用する屋根材のメーカーと商品名、数量、単価を明記していただけますか?」
⑤提案の根拠
「私の家のどの部分が、どのように傷んでいるのかを写真で見せて説明し、なぜこの工事方法が最適なのか、その理由を教えてください」
⑥許可と保険
「建設業許可や賠償責任保険の証明書を提示していただけますか?」
⑦保証制度
「工事の品質に対する『自社保証』と、屋根材メーカーの『製品保証』について、具体的な内容を教えてください」
⑧専門知識の確認(最重要)
「うちは瓦屋根でしたが、下地の歪みについてはどのように考慮されますか?また、念のため、うちの屋根が『パミール』のような塗装できない屋根材でないか、確認していただけますか?」
⑨契約への姿勢
「この見積もりを、家族と相談し、他社の意見も聞くために1週間ほど検討する時間をいただけますか?」
⑩連絡体制
「工事が始まったら、主な担当窓口はどなたになりますか?」
これらの質問、特に8番のような専門的な問いかけは、あなたが「知識のある施主」であることを業者に示し、不誠実な対応を未然に防ぐ強力な武器となります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。要点をまとめます。
・長年の瓦の重みで、家の屋根下地は歪んでいます。
・その歪んだ面に、硬くて脆いコロニアル屋根を乗せると、ひび割れ、雨漏り、台風被害の温床となります。
・正解は、家の歪みに追従できる、軽量で柔軟なガルバリウム鋼板やアスファルトシングルです。
・そして、屋根を軽くすることは、地震から家族の命を守る最も効果的な対策の一つです。
あなたの家は、あなたとご家族にとって最も価値のある資産であり、最も安全であるべき場所です。
目先の安さや、口先のうまい営業トークに、その安全を委ねないでください。
もしあなたが埼玉県内にお住まいで、お持ちの見積もりに少しでも疑問や不安を感じたら、どうぞお気軽に私たちアドカラーズにご相談ください。
私たちは単なる工事業者ではなく、この地域社会の家と家族を守る、あなたの隣人でありたいと心から願っています。
株式会社アドカラーズ 代表取締役 冨岡 龍也
(お問い合わせ先や会社情報は、ウェブサイト等でご確認ください)
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